2050年の人口予測から見る不動産市場 — 増えるエリアと半減するエリア
不動産価格を長期で動かす最大の要因は人口だ。住む人が増えれば住宅需要が上がり、価格も上がる。逆もまた然り。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表している2050年の市区町村別人口予測と、FUDOSAN DBの不動産取引データを突き合わせてみると、同じ首都圏でも+17%増えるエリアと-46%に半減するエリアが隣り合っている現実が見えてくる。
ただし、人口と不動産価格の関係は単純な比例ではない。人口が減っていても観光需要で地価が維持される地域もあれば、人口が増えていても供給過多で価格が上がらないケースもある。その前提を踏まえた上で、データを見ていく。
人口が増えるエリアの共通点
人口5万人以上の市区で、2050年までの人口増加率が高い上位10エリアを並べた。
| エリア | 現在人口 | 2050年 | 増減率 | 地価(万/m²) | マンション(万/m²) |
|---|---|---|---|---|---|
| 中央区(東京都) | 22.3万 | 26.1万 | +17.4% | 170 | 1,743 |
| 港区(東京都) | 33.7万 | 39.0万 | +15.8% | 258 | 2,222 |
| 千代田区(東京都) | 8.9万 | 10.2万 | +14.3% | 329 | 1,981 |
| 流山市(千葉県) | 29.1万 | 32.7万 | +12.2% | 17.1 | 511 |
| 台東区(東京都) | 28.5万 | 31.5万 | +10.5% | 115 | 1,125 |
| 印西市(千葉県) | 14.1万 | 15.6万 | +10.2% | 4.5 | 288 |
| 守谷市(茨城県) | 9.1万 | 10.0万 | +9.3% | 12.2 | 494 |
| 中原区(川崎市) | 33.2万 | 36.3万 | +9.3% | 45 | 1,074 |
| 品川区(東京都) | 54.7万 | 59.7万 | +9.0% | 109 | 1,374 |
| 幸区(川崎市) | 21.3万 | 23.3万 | +9.0% | 36 | 871 |
10エリアを眺めると、3つの型が浮かび上がる。
都心回帰型(中央区、港区、千代田区、台東区、品川区)。再開発でタワーマンションの供給が増え、職住近接を求める層が流入し続けている。地価100万円/m²超の高価格帯にもかかわらず人口が伸びるのは、この5区に限られた現象だ。
鉄道新線型(流山市、印西市、守谷市)。つくばエクスプレス(TX)の開業がもたらした変化で、3市とも沿線に位置する。地価は都心の10分の1から50分の1。この価格差こそが人口を引き寄せている。
武蔵小杉型(中原区、幸区)。川崎市の2区は、東急・JR・南武線が交差する交通結節点としてタワーマンション開発が集中した結果だ。
流山市に注目 — 千葉の郊外なのに+12%
上位10エリアの中で異色なのが流山市だ。都心3区や武蔵小杉は「高くても便利だから人が集まる」という分かりやすい構図だが、流山は地価17.1万円/m²、マンション平均511万円/m²と、都心の10分の1の価格帯にいる。それでいて+12.2%という増加率は品川区や台東区を上回る。
理由は3つある。
1つ目はTXの存在。流山おおたかの森駅から秋葉原まで25分。この通勤時間は、千葉県内の他の郊外都市と比べて圧倒的に短い。柏市や松戸市からJR常磐線で都心に出るより速い場合が多い。
2つ目は子育て支援。流山市は「母になるなら、流山市。」というキャッチコピーで知られ、駅前送迎保育ステーションなど独自の施策を展開してきた。30代の子育て世帯が集中的に転入している。
3つ目は価格の安さそのもの。地価17.1万円は都心の20分の1。同じ予算で3倍の広さの家が買える。子育て世帯にとっては広さと価格のバランスが決定的に重要で、通勤25分圏でこの価格帯を実現できるのはTX沿線くらいしかない。
同じTX沿線の印西市(+10.2%)、守谷市(+9.3%)も同じ構造を持っている。印西市の地価4.5万円/m²に至っては都心の70分の1だ。TX沿線は日本の人口減少局面において数少ない「勝ちエリア」になりつつある。
人口が半減するエリア
増加エリアの反対側を見る。2050年までに人口が大きく減少すると予測されているエリアだ。
| エリア | 現在人口 | 2050年 | 減少率 |
|---|---|---|---|
| 銚子市(千葉県) | 6.1万 | 3.3万 | -46.1% |
| 小樽市(北海道) | 12.8万 | 7.0万 | -45.2% |
| 宇和島市(愛媛県) | 6.3万 | 3.7万 | -41.2% |
| 河内長野市(大阪府) | 12.0万 | 7.4万 | -38.7% |
| 桐生市(群馬県) | 12.0万 | 7.5万 | -38.0% |
| 室蘭市(北海道) | 9.5万 | 5.9万 | -37.8% |
銚子市は25年で人口がほぼ半分になる。6.1万人から3.3万人への減少は、単なる「過疎化」という言葉では収まらない規模だ。学校、病院、スーパーといった生活インフラの維持が困難になる水準で、不動産市場以前に街としての持続性が問われる。
注目すべきは河内長野市。大阪府に属し、大阪市内へのアクセスもある程度確保されているにもかかわらず-38.7%という予測が出ている。南海高野線・近鉄長野線の沿線だが、丘陵地に開発されたニュータウンの高齢化が進み、若年層の流入が止まっている。「大阪近郊だから大丈夫」という判断は危うい。
不動産価格への影響は直接的だ。人口が半減すれば住宅需要も半減する。売りたくても買い手がいない状態になり、価格は理論値以上に下がる。固定資産税の負担だけが残る「負動産」が現実味を帯びてくる。
減少エリアでも価格が維持されるケース
人口減少と不動産価格の下落は強く連動するが、例外もある。
小樽市は人口-45.2%という厳しい予測だが、観光需要が不動産市場を下支えしている面がある。小樽運河周辺の商業地はインバウンド需要で取引が活発で、住宅地の下落とは異なる動きを見せている。ニセコに近い立地も、富裕層向けのセカンドハウス需要を生んでいる。
もう1つのパターンは、特定産業への依存度が高い自治体。室蘭市は鉄鋼業の街だが、脱炭素関連の設備投資で工業地の需要が維持される可能性がある。ただしこれは住宅地の話ではなく、産業用地に限った現象だ。住宅地の価格は人口減少にほぼ連動して下がると見るのが妥当だろう。
結局のところ、観光や特殊産業で価格が維持されるのは商業地や工業地の話であって、一般的な住宅地の場合、人口減少は価格下落にほぼ直結する。居住用の不動産を購入するなら、そのエリアの人口予測を確認しておくのは最低限の作業だと思っている。
FUDOSAN DBで自分のエリアを確認する
この記事で取り上げたのは極端な上位・下位のエリアだ。実際には、自分が住んでいる街や購入を検討しているエリアがこの中間のどこに位置するかが知りたいはずだ。
FUDOSAN DBでは、全国1,741市区町村の不動産データを公開している。
- エリア検索で市区町村名を入力すれば、地価の推移・マンション取引価格・取引件数を確認できる
- スクリーナーで地価上昇率や取引単価の条件を指定し、条件に合うエリアを絞り込める
- ランキングで地価の高い順・上昇率順など、指標別に市区町村を比較できる
人口予測の数字は社人研が5年ごとに改定する。予測はあくまで予測であり、TX開業前の流山市のように、交通インフラの変化1つで予測が覆ることもある。重要なのは、数字を定期的に追いかけて、変化の兆候を掴むことだ。