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新築の崖は、なかった — 首都圏の実取引で測る「新築プレミアム」

2026年7月19日 · 6分で読める

新築マンションは買った瞬間に2割下がる。よく聞く話だ。新品という上乗せ、つまり新築プレミアムを払っているのだから、鍵を受け取った途端に中古になって値が落ちる、と。だとすれば、少し我慢して築浅の中古を狙えば割安に買えるはずだ。今年2月に反響を呼んだ「ワニの口」(中古の売出価格と成約価格の乖離)の姉妹編として、この通説を国交省の実取引データで測ってみた。結論を先に言うと、崖はどこにも見当たらなかった。

68万件の成約で測る

使うのは不動産DBに収録された国土交通省の不動産取引価格情報。首都圏(東京都・神奈川・埼玉・千葉)の中古マンションの成約は約68万件ある。これを築年帯ごとの1㎡あたり成約単価(面積加重)に直し、新築の価格とぶつける。新築の単価は不動産経済研究所が公表する首都圏の新築分譲マンションの実績を使う。2024年(暦年)の首都圏新築は平均7,820万円、㎡単価117.7万円。東京23区は平均1億1,181万円、㎡単価171.0万円だった。

新築は「発売」の戸数加重平均、中古は「成約」の実取引で、集計のベースが違う。だから同じ1戸を追いかけた比較ではない。それでも、いま市場で新築と築浅中古がいくらで動いているかを並べれば、プレミアムの大きさは見えてくる。

東京23区、築5年落ちでも新築より8%安いだけ

東京23区の新築と中古マンションの築年帯別㎡単価(2024年)
新築=不動産経済研究所(発売・暦年2024)、中古=国土交通省 不動産取引価格情報(成約・面積加重・東京23区・2024)/不動産DB集計

まず構成が近い東京23区だけを見る。新築の㎡単価は171.0万円。これに対して中古の成約単価は、築2-3年で169.6万円、築4-5年で156.9万円。築5年落ちでも新築より8%安いだけだ。70㎡に換算すると差は約990万円。5年古いのに、この程度しか引けない。

もっと妙なのが築0-1年だ。単価は212.1万円で、新築を24%も上回っている。完成在庫の未入居転売や、抽選に外れた人が追いかける人気タワーの住戸が、新築の分譲価格より高く成約している。中古のはずが新築より高い。買った瞬間に落ちる崖どころか、しばらくは新築の水準に貼りついたまま動く。

区分(東京23区・2024年)㎡単価新築比
新築(発売)171.0万円
中古 築0-1年(新古)212.1万円+24%
中古 築2-3年169.6万円−1%
中古 築4-5年156.9万円−8%
中古 築6-10年141.6万円−17%
中古 築16年以上95.6万円−44%
ここがポイント
  • 東京23区では、築5年以内の中古は新築とほぼ同じ㎡単価で成約している。
  • 「中古なら割安」は、築浅ゾーンでは成り立たない。
  • 値下がりは購入直後の崖ではなく、築6年以降のなだらかな坂として効く。

割安は「築浅」ではなく「築古」に集中する

首都圏の中古マンションの築年帯別㎡単価(2024-2025年)
中古=国土交通省 不動産取引価格情報(成約・面積加重・首都圏・2024-2025)/不動産DB集計

首都圏全体で築年帯を並べると、値段は築年とともにきれいに下がっていく。築0-5年は135.9万円、築16-20年は90.4万円、築26-30年は61.6万円、築41年以上は42.2万円。築0-5年と築26-30年で2倍以上ひらく。割安が現れるのは築浅ではなく、はっきり築古だ。

東京23区に戻して、新築の171.0万円との差を70㎡で金額に直すと、この構造がよく見える。築4-5年で約990万円、築6-10年で約2,060万円、築16年以上でようやく約5,280万円。まとまった値引きが欲しいなら、5年落ちでは足りない。20年近く古い物件まで下りていく必要がある。

ただし築古の割安には裏がある。1981年より前の旧耐震、住宅ローン控除の築年要件、これから膨らむ修繕・建て替えの負担。安いのには理由があり、その理由は買い手のコストとして戻ってくる。「築古は割安」は事実だが、額面通りの得ではない。

中古が新築を追い抜いた5年間

東京23区の築5年以内中古マンションの㎡単価の推移(2016-2025年)
中古=国土交通省 不動産取引価格情報(成約・面積加重・東京23区・築0-5年)、新築=不動産経済研究所(発売・暦年2024)/不動産DB集計

なぜ崖が消えたのか。理由は築浅中古の側が走ったからだ。東京23区の築5年以内の成約単価は、2016年の101.8万円から2024年の175.6万円まで、8年で1.7倍になった。新築が上がるのを追いかけて、いや追い越して、2024年にはとうとう新築の171.0万円を上回った。新築が高いから中古も引っ張られる。中古が新築に迫るから、新築との差=プレミアムが薄くなる。上げ相場が、新品の上乗せを飲み込んでいった。

この動きは首都圏全体でも同じ向きだ。ただし首都圏の数字(築0-5年131.0万円が新築117.7万円を上回る)は、新築の供給が郊外まで広がって平均を下げている一方、築浅中古が都心寄りに偏っていることの影響を多く含む。だから中古が新築を上回ると強く言えるのは、構成を揃えた東京23区の話にとどめておく。

新築プレミアムの正体

実測してみると、新築プレミアムは「新品」への上乗せというより、「築浅であること」全体への高値だった。新築を頂点に、築0-1年、築2-3年、築4-5年までがほぼ同じ高さで並び、そこから先の築古でようやく坂が始まる。買った瞬間に消える崖のような上乗せは、少なくとも今の首都圏の実取引には写らない。

この事実は、買い手にとって優しくない。「新築は無理でも築浅中古なら」という逃げ道が、東京23区ではほとんど塞がっている。逃げ場は築古にしかなく、そこには旧耐震や修繕という別の勘定が待っている。中古が割安かどうかは、どれだけ古い中古かで全く変わる。まず自分の狙うエリアと築年で、新築と中古の単価が実際にどれだけ離れているかを確かめてほしい。

エリアと築年で相場を確かめる

不動産DBでは、市区町村ごとに中古マンションの取引単価や地価、人口推計をまとめて見られます。狙うエリアの相場水準と方向を、同じ画面で確認できます。

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データについて
新築は不動産経済研究所の首都圏新築分譲マンション実績(発売ベース、戸数加重)、中古は国土交通省 不動産取引価格情報(成約ベース、面積加重、trade_price÷area_m2)を用いています。両者は集計の母集団が異なり、同一物件の比較ではありません。中古の築0-5年は小型住戸が多く㎡単価がやや高めに出る点、新築供給が郊外を含むため首都圏平均が下がる点も、数字に含まれています。
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本記事は公開データ(国土交通省 不動産取引価格情報、不動産経済研究所 公表資料)にもとづく一般的な解説であり、特定の物件・地域の購入や売却を推奨するものではありません。取引価格は成約時点の実績で、将来の価格を保証するものではありません。新築の数値は発売実績であり、中古の成約実績とは集計の母集団が異なります。