人口が増える街の地価は、もう動いているか
先日、この不動産DBのデータで「2050年、人口が増える街は全国で74しかない」という記事を書いた。全国1,900あまりの市区町村のうち、増えるのはごく一部で、ほとんどの街は人が減っていく。ただ「増える街を買えばいい」と言えるほど、話は単純ではない。人口が増えるという未来が、すでに今の地価に出てしまっているかもしれないからだ。増える街の地価は、もう動いているのか。国交省の地価公示と、社人研の将来推計を重ねて測ってみた。
増える街の多くは、もう織り込まれている
全国の住宅地の地価は、実はそれほど動いていない。2026年の地価公示でみると、市区町村ごとの変動率の中央値は+0.7%。4分の1は下がっている。ところが、2050年に人口が増えると推計される74市区町村だけを取り出すと、風景が一変する。うち26、つまり3分の1が、地価をすでに年8%超で上げている。港区は人口+15.9%に対して地価+16.6%、流山市は人口+11.1%に対して地価+13.3%。人口が増えるという物語は、多くの街ですでに価格に書き込まれている。
- 全国の住宅地の地価変動率は中央値+0.7%。動いている街のほうが少数派だ。
- 2050年に人口が増える74市区町村のうち、26は地価が年8%超で上昇済み。
- 「人口が増える街を買う」は正しい。ただし多くは、もう遅い。まだ地価が静かなのは6つだけだ。
同じ路線に、走った駅と静かな駅がある
その「まだ静かな街」を、一本の路線の上で見てみる。つくばエクスプレス。秋葉原とつくばを結び、沿線人口を増やし続けてきた成長軸だ。
流山市の住宅地は、10年で1.6倍になった(中央値11.6万→19.0万円/㎡)。守谷市も1.5倍。ところが同じ路線のつくばみらい市は、人口が増える見込み(+9.0%)なのに、地価はほとんど横ばいだ。2016年に2.6万円/㎡だった住宅地が、2026年でも3.0万円/㎡。地価の水準は、流山の3分の1以下でしかない。
面白いのは、つくば市のほうだ。人口はほぼ横ばい(+0.6%)なのに、地価は+12.1%上がっている。研究都市という、人口とは別の需要が土地を押し上げている。地価は、人口だけで決まるわけではない。増える街のなかにも走らない駅があり、増えない街にも走る駅がある。
| つくばエクスプレス沿線 | 将来推計人口 | 地価変動率 | 住宅地地価 |
|---|---|---|---|
| 流山市 | +11.1% | +13.3% | 194,356円/㎡ |
| 八潮市 | +9.2% | +3.9% | 144,042円/㎡ |
| つくばみらい市 | +9.0% | +2.9% | 56,265円/㎡ |
| 守谷市 | +8.4% | +10.4% | 136,859円/㎡ |
| つくば市 | +0.6% | +12.1% | 77,224円/㎡ |
静かな地価は、発見か、それとも正しい値付けか
つくばみらい市のように「人口が増えるのに地価が静か」な街は、ほかにもある。さいたま市緑区の浦和美園、東武東上線の滑川町。カルテのように並べてみる。
| 人口が増え、地価はまだ静かな街 | 将来推計人口 | 地価変動率 | 住宅地地価 | 年間取引 |
|---|---|---|---|---|
| 滑川町(埼玉・東武東上線) | +9.5% | −0.1% | 53,140円/㎡ | 46件 |
| つくばみらい市(茨城・TX) | +9.0% | +2.9% | 56,265円/㎡ | 103件 |
| さいたま市緑区(浦和美園) | +6.3% | +2.3% | 193,713円/㎡ | 372件 |
| 吉川市(埼玉・武蔵野線) | +3.7% | +0.7% | 93,920円/㎡ | 134件 |
滑川町は極端だ。人口が1割近く増える見込みなのに、地価は10年間、ほとんど1円も動いていない。住宅地の中央値は2016年の6.0万円/㎡が、10年後も6.1万円/㎡のままだ。
静かな地価は、二通りに読める。まだ誰も見つけていない街かもしれないし、上がらないだけの理由がある街かもしれない。取引はどこも薄く(滑川町は年46件)、地価公示の調査地点も少ない。だからデータは「これは買いだ」とは言わない。言えるのは、人口が増えるという話がまだ地価に出ていない街が、確かに存在する、ということだけだ。そこから先は、交通の便や産業、供給される宅地の量を一つずつ確かめる仕事になる。
逆に、住む人が減るのに最も上がる街
人口と地価の関係が最も裏切られるのは、増える街ではなく、減る街のほうだ。白馬村は2050年にかけて人口が2割減る見込みだ。なのに住宅地の地価は+22.8%と、全国でもトップクラスに上がっている。倶知安町(ニセコ)は人口が2割近く減るなかで地価+11.1%、富良野市に至っては人口が3割以上減る見込みで、それでも地価は+7.8%だ。
買っているのは、そこに住む人ではない。観光客であり、別荘であり、海外の資本だ。人が暮らすための土地と、資本が集まるための土地は、別の理屈で値が付く。「人口が減れば地価も下がる」という素直な公式が、ここでは最もはっきり崩れている。ただし、これらの町の地価公示はわずか3〜8地点で、リゾート中心部の一部を映した数字だ。町全体が均等に上がっているわけではない点は、割り引いて読みたい。
人口は、地価の一因にすぎない
並べてみると、こうなる。人口が増える街の多くは、地価がもう上がっている。まだ静かな街は、機会にも罠にもなりうる。そして、人口が減っても上がる土地がある。人口は地価を動かす大きな一因だが、それが唯一の因ではない。将来推計という一本の線だけで土地を語ると、足をすくわれる。あなたが気になっているエリアは、人口の話がもう地価に出ている街だろうか。それとも、まだ静かなほうだろうか。
不動産DBでは、市区町村ごとに将来推計人口、地価の推移、実取引の単価をまとめて見られます。気になる街が「もう織り込み済み」か「まだ静か」かを、同じ画面で確認できます。
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プランを見る本記事は公開データ(国土交通省 地価公示・都道府県地価調査、国立社会保障・人口問題研究所 将来推計人口)にもとづく一般的な解説であり、特定の地域・物件の購入や売却を推奨するものではありません。将来推計人口は一定の仮定に基づく推計で、実際の人口や地価の推移を保証するものではありません。地価変動率は調査地点にもとづく値で、地点数の少ない地域では地域全体を代表しない場合があります。